2006年 08月 21日
ここ数年のコンピューターの大幅なクロックアップにより、フル・ネイティブ環境での楽曲制作/ミックスダウンが十分に可能な時代を迎えていることは確かだと思いますが、ソフトウェアの違いにより、その「音質」が変わってくることがしばしば話題にのぼります。 ことLogicの音質について、ネット上などでも議論されているところをたびたび目にいたしますが、今回は、私自身もメインアプリに使用することが多いLogic Pro 7でのミックスダウンについて、音の奥行き感や広がりが大幅に改善される技のご紹介です。 Logicでミックスダウンをする場合、「音が団子になりがち」という性質は、私も以前から感じておりました。 Logic Pro 6 以前は「Pan Law」の調整が出来ず、センターに定位させた音が大きく聞こえてしまうことが、その大きな要因だったように思います。 Logic Pro 7 以降は、メニューの「ファイル>ソング設定>オーディオ」の項で、「Pan Law」の設定ができるようになり、この問題が解決したようにも見えました。 Logic Pro 7 になり、早速私は「Pan Law -3db」という一般的な設定で制作を開始してみたところ、大きな問題にぶつかってしまいました。 複数のドラム・トラックで1つのグループを組むためにBusトラックへ送ったところ、Busに送ったトラックのレベルが、直接アウトプットに送っていた時よりも下がってしまったのです。 こんな仕様では、せっかく付いた「Pan Law」も使い物にならないと思っていたところ、この状態を回避する設定を発見いたしました。 この発見が、音の奥行き感や広がりが改善されることに繋がっていきます。 Logic Pro 7のオーディオドライバの設定画面に、「ユニバーサルトラックモード」というチェック項目があります。 デフォルトではこれにチェックが入った状態です。 この「ユニバーサルトラックモード」にチェックが入っているのといないのとでは、ステレオのトラックの扱い方が違ってまいります。 このチェック項目自体は、確かLogic 3.6ぐらいで登場したものだと記憶しておりますので、古くからLogicを使用している方は、ご存知のチェックボックスかと思います。 「ユニバーサルトラックモード」がオンとは、以下のような状態です。 (トラックミキサーではなく、オーディオのエンバイロメント画面でご確認ください。) これが「ユニバーサルトラックモード」がオフだと、以下のようなエンバイロメントになります。 つまり「ユニバーサルトラック」をオフにすると、オーディオトラックやBusトラックをステレオで扱う場合、2つのフェーダーを使用することになるのです。 (インストトラックはその性質上、「ユニバーサルトラック」オン/オフの影響は受けません。) 「ユニバーサルトラックモード」については、「Logic Pro 7 リファレンス・マニュアル」の314ページにも記載されているので、そちらもご参照ください。 この「ユニバーサルトラックモード」がオフの状態だと、「Pan Law -3db」の状態で複数のトラックをBusに送っても、前記のようにレベルが下がることはありませんでした。 私はぜひとも「Pan Law -3db」の状態で制作をしたかったので、必然的に「ユニバーサルトラックモード」をオフにする必要が出てきました。 そして、この「ユニバーサルトラックモード」のオンとオフで、ミックダウンの結果が大きく変わることが分かったのです! 私は、「ユニバーサルトラックモード」をオンの状態で制作した楽曲を、「ユニバーサルトラックモード」オフの状態へ変換をしていったのですが、これが一筋縄ではいかない作業でした。 何しろ1フェーダーで扱っていたステレオトラックに、2フェーダーをあてがう必要が出てくるのです。 例えば、「ユニバーサルトラックモード」がオンの状態で4つのステレオファイルを扱っている以下のようなソングがあるとします。 「ユニバーサルトラックモード」をオフにするには、アレンジウィンドウ上で以下のように動かさなければいけないのです。 これにエフェクトが掛かっていたら、さらに複雑になってまいります。 この変換作業にはいろいろな方法があるとは思いますが、まず「ユニバーサルトラックモード」をオンの状態で各エフェクトの設定をそれぞれ別名で保存してしまい、どのトラックに何のエフェクトが挟まっていたかとそのフェーダー値を全部メモした上で、エフェクトを全て外します。 そして上記のように、アレンジウィンドウ上でオーディオトラックをずらしてあげた後、「ユニバーサルトラックモード」のチェックを外します。 そしてエフェクトとフェーダー値を元のように再構築していってください。 「ユニバーサルトラックモード」はBusトラックやAuxトラックにも影響しているので、BusやAuxをステレオで扱っていたら、そこも変更が必要です。 ステレオの「Bus 1」へセンドしていたトラックは、「Bus1-2」へセンドするように変更する必要があります。 そしていくつかのソングを「ユニバーサルトラックモード」オフの状態へ変換してみると、全く同じエフェクト、全く同じフェーダー値なのに、楽曲の「鳴り」が一変いたしました。 一枚ベールが削いだようなと言いましょうか、音の奥行き感と広がりが非常に良くなり、Logicにありがちな「音が団子になる」状態が大幅に改善されたのです。 特にリバーブやディレイを多用している楽曲においては、その変わり方が顕著です。 これはもう試していただくしかありません。 「ユニバーサルトラックモード」のオンとオフでは何が違うのか、よくご理解いただければ、変換が面倒なことは確かですが、確実にその違いを感じていただけると思います。 私が思うに、「ユニバーサルトラックモード」がオフの状態が、Logic本来の実力を発揮しているような気がします。 Logic Pro 7でミックスダウンまで行う際には、「ユニバーサルトラックモード」がオフで、「Pan Law」が「-3db」という設定がお薦めです。 ぜひお試しください。 追記: 「ユニバーサルトラックモード」がオフでもインターリーブ・ステレオファイルを扱えますが、メニューの「Logic Pro>環境設定>オーディオ」の項の、「インターリーブ形式で録音されたファイルをスプリットステレオファイルに変換」にチェックを入れておくと、ステレオファイルは全てスプリットで扱われることになり、Pro Toolsのオーディオファイルの扱い方と互換が取れることになります。 Pro Toolsへの取り込みが必要な方は、このチェックを入れておくことをお薦めいたします。
by music_drec
| 2006-08-21 03:14
| ソフトウェア検証
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