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レコーディング機材検証の中で。。。

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2006年 08月 21日

Logic Pro 7 でのミックスダウン

ここ数年のコンピューターの大幅なクロックアップにより、フル・ネイティブ環境での楽曲制作/ミックスダウンが十分に可能な時代を迎えていることは確かだと思いますが、ソフトウェアの違いにより、その「音質」が変わってくることがしばしば話題にのぼります。
ことLogicの音質について、ネット上などでも議論されているところをたびたび目にいたしますが、今回は、私自身もメインアプリに使用することが多いLogic Pro 7でのミックスダウンについて、音の奥行き感や広がりが大幅に改善される技のご紹介です。

Logicでミックスダウンをする場合、「音が団子になりがち」という性質は、私も以前から感じておりました。
Logic Pro 6 以前は「Pan Law」の調整が出来ず、センターに定位させた音が大きく聞こえてしまうことが、その大きな要因だったように思います。
Logic Pro 7 以降は、メニューの「ファイル>ソング設定>オーディオ」の項で、「Pan Law」の設定ができるようになり、この問題が解決したようにも見えました。
Logic Pro 7 でのミックスダウン_b0075089_15797.jpg

Logic Pro 7 になり、早速私は「Pan Law -3db」という一般的な設定で制作を開始してみたところ、大きな問題にぶつかってしまいました。
複数のドラム・トラックで1つのグループを組むためにBusトラックへ送ったところ、Busに送ったトラックのレベルが、直接アウトプットに送っていた時よりも下がってしまったのです。
こんな仕様では、せっかく付いた「Pan Law」も使い物にならないと思っていたところ、この状態を回避する設定を発見いたしました。
この発見が、音の奥行き感や広がりが改善されることに繋がっていきます。

Logic Pro 7のオーディオドライバの設定画面に、「ユニバーサルトラックモード」というチェック項目があります。
デフォルトではこれにチェックが入った状態です。
Logic Pro 7 でのミックスダウン_b0075089_1144745.jpg

この「ユニバーサルトラックモード」にチェックが入っているのといないのとでは、ステレオのトラックの扱い方が違ってまいります。
このチェック項目自体は、確かLogic 3.6ぐらいで登場したものだと記憶しておりますので、古くからLogicを使用している方は、ご存知のチェックボックスかと思います。

「ユニバーサルトラックモード」がオンとは、以下のような状態です。
(トラックミキサーではなく、オーディオのエンバイロメント画面でご確認ください。)
Logic Pro 7 でのミックスダウン_b0075089_1262936.jpg

これが「ユニバーサルトラックモード」がオフだと、以下のようなエンバイロメントになります。
Logic Pro 7 でのミックスダウン_b0075089_12937.jpg

つまり「ユニバーサルトラック」をオフにすると、オーディオトラックやBusトラックをステレオで扱う場合、2つのフェーダーを使用することになるのです。
(インストトラックはその性質上、「ユニバーサルトラック」オン/オフの影響は受けません。)
「ユニバーサルトラックモード」については、「Logic Pro 7 リファレンス・マニュアル」の314ページにも記載されているので、そちらもご参照ください。

この「ユニバーサルトラックモード」がオフの状態だと、「Pan Law -3db」の状態で複数のトラックをBusに送っても、前記のようにレベルが下がることはありませんでした。
私はぜひとも「Pan Law -3db」の状態で制作をしたかったので、必然的に「ユニバーサルトラックモード」をオフにする必要が出てきました。

そして、この「ユニバーサルトラックモード」のオンとオフで、ミックダウンの結果が大きく変わることが分かったのです!

私は、「ユニバーサルトラックモード」をオンの状態で制作した楽曲を、「ユニバーサルトラックモード」オフの状態へ変換をしていったのですが、これが一筋縄ではいかない作業でした。
何しろ1フェーダーで扱っていたステレオトラックに、2フェーダーをあてがう必要が出てくるのです。

例えば、「ユニバーサルトラックモード」がオンの状態で4つのステレオファイルを扱っている以下のようなソングがあるとします。
Logic Pro 7 でのミックスダウン_b0075089_1561786.jpg

「ユニバーサルトラックモード」をオフにするには、アレンジウィンドウ上で以下のように動かさなければいけないのです。
Logic Pro 7 でのミックスダウン_b0075089_1571796.jpg

これにエフェクトが掛かっていたら、さらに複雑になってまいります。

この変換作業にはいろいろな方法があるとは思いますが、まず「ユニバーサルトラックモード」をオンの状態で各エフェクトの設定をそれぞれ別名で保存してしまい、どのトラックに何のエフェクトが挟まっていたかとそのフェーダー値を全部メモした上で、エフェクトを全て外します。
そして上記のように、アレンジウィンドウ上でオーディオトラックをずらしてあげた後、「ユニバーサルトラックモード」のチェックを外します。
そしてエフェクトとフェーダー値を元のように再構築していってください。

「ユニバーサルトラックモード」はBusトラックやAuxトラックにも影響しているので、BusやAuxをステレオで扱っていたら、そこも変更が必要です。
ステレオの「Bus 1」へセンドしていたトラックは、「Bus1-2」へセンドするように変更する必要があります。
Logic Pro 7 でのミックスダウン_b0075089_2222131.jpg


そしていくつかのソングを「ユニバーサルトラックモード」オフの状態へ変換してみると、全く同じエフェクト、全く同じフェーダー値なのに、楽曲の「鳴り」が一変いたしました。
一枚ベールが削いだようなと言いましょうか、音の奥行き感と広がりが非常に良くなり、Logicにありがちな「音が団子になる」状態が大幅に改善されたのです。
特にリバーブやディレイを多用している楽曲においては、その変わり方が顕著です。

これはもう試していただくしかありません。
「ユニバーサルトラックモード」のオンとオフでは何が違うのか、よくご理解いただければ、変換が面倒なことは確かですが、確実にその違いを感じていただけると思います。

私が思うに、「ユニバーサルトラックモード」がオフの状態が、Logic本来の実力を発揮しているような気がします。
Logic Pro 7でミックスダウンまで行う際には、「ユニバーサルトラックモード」がオフで、「Pan Law」が「-3db」という設定がお薦めです。
ぜひお試しください。

追記:
「ユニバーサルトラックモード」がオフでもインターリーブ・ステレオファイルを扱えますが、メニューの「Logic Pro>環境設定>オーディオ」の項の、「インターリーブ形式で録音されたファイルをスプリットステレオファイルに変換」にチェックを入れておくと、ステレオファイルは全てスプリットで扱われることになり、Pro Toolsのオーディオファイルの扱い方と互換が取れることになります。
Pro Toolsへの取り込みが必要な方は、このチェックを入れておくことをお薦めいたします。

# by music_drec | 2006-08-21 03:14 | ソフトウェア検証
2006年 07月 27日

Apogee Ensemble 試聴レポート

Apogee Ensemble 試聴レポート_b0075089_125171.jpg


Apogee Ensembleが発売される前に最も多かったお問い合わせは、ずばり、「他のインターフェースと比べて出音はどうか?」というものでした。
もちろん私自身も、まずはその点が気になります。

今日、やっと、じっくりと比較をする時間が取れました。
比較したのは上にもリストアップした通り、Digi002Rack、Ensemble、Traveler、FireFace800の4機種です。
ネイティブ環境を構築するインターフェースの中でも、ハイエンドのインターフェースとして、今最も認知度の高い4製品と言えると思います。

まず最初にお伝えしたいのは、この4機種はどれも素晴らしい出音だということです。
価格的にはApogeeのEnsembleが最も高価ではありますが、それぞれの出音の違いは、お客様の好みによっては、「Ensemble以外のインターフェースの方が好き」という印象を持たれることも十分にありえる違いだと思います。
あくまで私の主観としてその印象を書いてみたいと思いますが、この点ををご理解いただいた上でお読みいただければと思います。


Apogee Ensembleの出音を聞いてまず気付くのは、そのレンジの広さです。
バスドラの「ドスッ」という低音、ハイハットの「チッチッ」というビート感、「ガシャーン」と鳴らしたシンバルの余韻など、どれもしっかりと表現しきってくれます。
この点に関しては、多少の傾向の違いはあれど、FireFace800も素晴らしいと思いました。

私が、Ensembleが他のインターフェースと一線を画すと思ったのは、中域の鳴りです。
ボーカルやギターなどの「艶」と「張り」が大変に気持ち良く、それらをEQでいじった際やリバーブへのセンド量を調整した際など、その変化が手に取るように分かります。
Apogeeの伝統的な音は、Ensembleでも継承されているように思いました。

ただ音源によっては、このEnsembleの出音の「張り」が、逆に暑苦しいという場合もあるかもしれません。
レンジの広さでは負けていないFireFace800とEnsembleの違いは、中域の表現の仕方だと思うのですが、聞く方の好みによっては、FireFace800の方がスッキリしていて好きという場合もあるかと思います。

Digi002RackやTravelerは、非常に扱い易い、大変うまくまとめられた出音という印象です。
そのまとまり具合はとても音楽的で、十分に納得のできる出音だと思います。
レンジの広さではEnsembleやFireFace800に一歩譲ったとしても、自宅でのミックスの際などは、Digi002RackやTravelerの出音の方がまとめ易い場合もあるのではないかと思いました。

最後にもう少し加えておくと、今回比較した4機種の価格は、Traveler(¥138,000)からEnsemble(¥265,000)までの開きがあるわけですが、4機種を順番に比べていくと、その価格差なりの出音の違いに、私は十分「納得」できました。
Apogee Ensembleのコストパフォーマンスが高いのは確かだと思います。
私がインターフェースを購入する際に、もしも予算が許すなら、きっと Ensembleを選ぶと思います。
(私がLogicをメインにしているということもありますが。)

繰り返しになりますが、あくまで私の主観的な見解です。
私の稚拙な文章よりも、ご自身の耳でご確認いただくのが一番です。

それでは、また。

# by music_drec | 2006-07-27 04:28 | 周辺機器
2006年 07月 24日

SSL Duende 発売!

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レコーディングスタジオの業務用コンソールとして、歓呼たる地位と厚い信頼を得ている「Solid Stete Logic(以下、SSL」社から、同社純正のDAW用のプラグインが発売されるというニュースには、私も大変驚きました。

数ヶ月前から「SSL」のWEBサイトで、LMC-1というフリーウェアのコンプレッサー・プラグインが配布されておりますが、今回発売された「Duende(デュエンデ)」という製品は、FireWire接続、1UラックマウントのDSPプラットフォームと、そのDSP上で動作するプラグインで構成されています。
TC ElectronicのPowerCore FireWireなどと同じ発想の製品と言っていいでしょう。

現状ではMac OS X 10.4.4以上(Power Macのみ、Intel Macには近日対応)、Audio UnitsとVSTフォーマットに対応、付属するVST-RTAS Adapterを使用することで、RTASでの使用も可能になります。
(Windowsへの対応は、2006年後半を予定。)

付属するプラグインは、「Channel Strip(EQ&Dynamics)」と「Bus Compressor」の2種類のみです。
SSL Duende 発売!_b0075089_0342669.jpg

同種の製品であるPowerCoreやUAD-1と比べると、バリーエーションという点では見劣りするようにも思えますが、この2種のプラグインは、「SSL」社の最高峰コンソールである「XL9000K」のサウンドをシミュレートした最新デジタルコンソール、「C200」のチャンネル・ストリップのアルゴリズムをそのままプラグイン化したものなのです。
つまり「SSL」の最高峰コンソールのチャンネル・ストリップを、ご自宅のDAW上で使用できるというわけです。

私自身は、「SSL」のコンソールを使ったミックスはもちろん経験したことがありませんが、「悪かろうはずがない」ことは容易に想像できます。
「プロサウンド」誌の8月号において「SSL」の本社スタッフであるジェームス・モトリー氏は、「Duendeのサウンドはイミューレーションではなく”本物”である」と明言しております。
そのサウンドは如何なるものなのか、早速検証してみました。


付属するインストーラーからインストールを行い、「Duende」をFireWire接続し、「Duende」の電源をオン、これだけで使用可能になります。
FireWire接続はBusパワーでも大丈夫です。
4ピンでのFireWire接続も考慮し、電源アダプターも付属はしておりますが、Busパワーでも問題なく使用できるとのことです。

Logic上でそのチャンネル・ストリップを立ち上げてみると、ダイナミクスのカーブやEQのカーブをグラフィカルに表示してくれる今時のプラグインとは違い、基本つまみのみのシンプルなプラグインであることが分かります。
プリセットも付属しておりませんので、コンプやEQの操作にある程度慣れている方でないと、最初は取っ付きにくいかもしれません。
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しかしいざそのつまみを動かしてみると、「Duende」が「SSL」純正のプロダクトであることを思い知らされます。
私自身は「SSL」のコンソールを操作したことがないことは先に述べましたが、本物との比較論といった次元でなくても、このプラグインがいかに素晴らしい仕上がりであるか、すぐにわかりました。

DAW上でEQを掛けるとき、高域を上げるのを躊躇することはありませんか?
あるトラックの音の抜けをもう少し良くしたいといった時、思わずEQで高域を上げてしまいますが、音の抜けが良くなるというより、どうもギラギラした音になってしまい、思った効果にならない時があります。
もちろん私のテクニックの未熟さ故ではあるのですが、その昔、アナログコンソールのEQで高域を上げていた頃の感覚とは、微妙に違う時があるのです。

「Duende」のプラグインでは、この微妙な感覚のずれは全くありませんでした。
EQを使った時に、この帯域を、これくらいのQで、何db上げるといった操作で出てくる音は、何の違和感もなくその効果が反映された音になっています。
つまみを極端な値に設定したとしても、その効果がきちんと反映されるだけで、妙にギラギラしたり、変に音痩せしたりすることはありません。

これはダイナミクス部も同様で、変に音が潰れて引っ込んでしまったり、余計に音圧が上がってバランスが崩れたりするのではなく、スレッショルドがこの値で、レシオがこれぐらいなら、これぐらい潰れるという感覚が、原音のニュアンスを損なわずにきちんと再現されます。
「SSL」のコンソールを未経験の私でも、「Duende」のプラグインは「本物のSSL」というのが、非常に納得できる効果です。

文章だけで書いていると何だか当たり前のようにも聞こえますが、飛び道具的な効果のプラグインも多い中、ハイクオリティなアナログコンソールと同様の効果のチャンネル・ストリップが、こんなにも重宝するとは思いませんでした。
今まで、ドラム系音源にはこのコンプ、ピアノ音源にはこのEQといった具合に、プラグインの特性とキャラクターの違いで、数種のプラグインを何となく使い分けていたのです。
「Duende」には、基本的なEQとコンプは、DSPの許す限り「Duende」の物を使いたいと思わせるものがあります。


ちなみに「Duende」1台で、44.1kHz/48kHz時にはモノラル32ch分(ステレオ16ch分)のチャンネル・ストリップの使用が可能です。
88.2kHz/96kHz時には、その半分になります。
DSPプラグイン使用時のCPU負荷も非常に低く、ノートでの使用も十分可能でしょう。

PowerCoreやUAD-1との併用も試してみました。
それぞれのDSPを全て使い切るという極端な検証は行いませんでしたが、特に問題はなさそうです。
ただし、DuendeにオーディオインターフェースをFireWire、 おまけにPowerCoreもFireWireで接続となると、信号のやり取りがFireWireの帯域としてかなりつらそうです。
オーディオインターフェースかPowerCoreはPCI接続にした方がいいと思います。


前述した通り、VST-RTAS Adapterを使ってRTAS化することで、Pro Tools上で使用することも可能です。
「Duende」の性格上、TDM環境で使用したいという方も多いと思いますが、「Duende」はFireWire接続ですので、PCIスロットが埋まっている方や、拡張シャーシをお使いの方でもアドオンすることが可能なのです。
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TDM環境においては、遅延補正エンジンをオンにすることで、DSPプラグインにつきもののレイテンシーを気にせず使用することができます。
Pro Tools LEの場合は、「Time Adjuster」プラグインを使った手動での補正が必要ですが、「Duende」の取説にはその補正の仕方が詳しく書かれています。


正直、同種の製品と比較すると決してお手頃な価格ではありませんが、「Duende」を導入することで、数千万円の最高峰アナログコンソールのチャンネル・ストリップを、プラグインとして使用することが可能になるのです。
この手のうたい文句と製品のクオリティが一致しない物も多数存在するように思いますが、そこはさすがに「SSL」、期待を裏切らない素晴らしい製品です。
(私も欲しい!!)

# by music_drec | 2006-07-24 03:41 | ソフトウェア検証
2006年 07月 08日

KONTAK 2で3rdパーティー製NIエンジン・サンプラーのライブラリーを使う

本当に久しぶりの更新です(すいません)。KONTAK 2で3rdパーティー製NIエンジン・サンプラーのライブラリーを使う_b0075089_0144532.jpg

今回取り上げるのは、Native Instruments社の10周年記念として特別バンドル版で登場いたしました、「KONATKT 2 クロスグレード・バンドル」です。

現在、NIのKOMPAKTエンジンやINTAKTエンジンを積んだ、3rdパーティー製のソフトウェア・インストゥルメンツが数多く発売されております。
発売しているのは、Art Vista、Best Service、Big Fish、East West、Garritan、Zero-Gといったメーカーです。
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これらのメーカーは、いわゆるサンプリングCDメーカーとしての歴史をもつメーカーで、これまでにAKAIやEMUなどのハードウェア・サンプラー用のライブラリーを数多く発売してきました。
これらサンプリングCDメーカーのライブラリーとNI製のサンプラー・エンジンを結合させることで、ハードウェア・サンプラーでは考えられなかった、数(十)GBもの大容量ライブラリーを有するプレイバック・ソフトサンプラーが、今では主流になっています。


今回ご紹介する「KONTAK 2 クロスグレード版」は、これらNIのサンプラー・エンジンを積んだ3rdパーティー製ソフトウェアをお持ちの方のみ使用できる、特別パッケージの「KONATK 2」です。
(3rdパーティー・ソフトウェアと同じユーザーアカウントでないとオーサライズができません。)
一見単なる優待販売にも見えますが、3rdパーティー製NIエンジンのソフトを複数お持ちの方には、大変意義のあるクロスグレードになります。

NIのサンプラー・エンジンを積んだ3rdパーティー製ソフトウェアに含まれるライブラリーは、もちろんNIのKONTAKT/INTAKTフォーマットで収録されています。
これらNIエンジンの3rdパーティー製ソフトウェアがオーサライズされているマシンにKONTAKT 2をインストールすると、KONTAKT 2で、3rdパーティー製のライブラリーも自由に読み込むことが可能になるのです。
NIから発売されている「Akoustik Piano」「Elektrik Piano」「Bandstand」も実はKONTAKTフォーマットを使っており、KONTAKT 2での読み込みが可能です。
(Akoustik Piano、Bandstandの読み込みには、Kontakt 2.1以上が必要です。)

KONATK 2に積まれているデータベース・エンジンを活用すると、以下のようにKONTAKT 2のクイック・ロードに、3rdパーティーのライブラリーを表示させることも可能です。
(ただ、以下の状態ほど多くのライブラリーを登録すると、リストの表示が極端に遅くなりますので、全てを登録するのはお薦めいたしません。)
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3rdパーティー製プラグインに含まれるKOMPAKTは、プラグイン1個につき最大で8パートまでのマルチティンバー、INTAKTは1個につき1パートまでになってしまいますが、KONTAKT 2でしたら、プラグイン1個で16パートまで使用可能になります。

例えば1つの「KONTAKT 2」の中で、Best Service「Artist Complete」収録の単発ドラムやドラムループで基本のドラムパターンを作り、East West「Hardcore Bass XP」にベースを担当させ、上モノのパーカッション・ループをはZero-G「Sounds of 70s」で、バッキングのピアノとエレピはArt Vista「Virtual Grand Piano」とNI「Elektrik Piano」で、ストリングスはEast West「QLSO Gold Edition」で、ブラスはBest Service「Chris Hein Horns」で、さらにEast West「Colossus」で上モノを装飾、とどめのヘビーギターはBig Fish「Raising Guitars」で、なんてことが可能なのです。
(正直、あまりあり得ない組み合わせかもしれませんが、あくまで例ですので。)
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KONTAKT 2へ読み込むことで、スクリプトを含む高度なエフェクト処理による音作りはもちろんのこと、サンプルのマッピングの組み替えも可能になりますので、KONTAKT 2を導入することの恩恵は非常に大きいと言えると思います。


それではパフォーマンス面での恩恵はどうなのでしょう?
KONTAKT 2は、先日バージョン2.1のダウンロードが開始され(現在はバージョン2.1.1)、ハードディスク・ストリーミングのCPU負荷を含む、全体のパフォーマンスが大幅に改善されました。
デュアルCPUへの最適化も強化されています。

そこでEast West QLSO Silver Editionを使った実験を行ってみました。

EWQLSO Silverのライブラリーを合計28パート使ったフルオーケストラのソングデータをLogic Pro 7.2上で走らせ、EWQLSO Silverのプラグイン(バージョン1.0.8)を4つ使って再生した場合と、Kontakt 2(バージョン2.1.1)を2つ使って再生した場合の、CPU負荷がピークの時のパフォーマンス・メーターを比較してみました。
再生に使ったマシンは、Power Mac G5 2.5GHz Dual(3GB RAM)です。

EWQLSO Silver Edition(バージョン1.0.8) 4つの場合
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Kontakt 2(バージョン2.1.1) 2つの場合
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実はこのCPUメーターの差だけではお伝えできない違いとして、ハードディスク・ストリーミングのパフォーマンスがあります。
3rdパーティー製ソフトウェア付属のKOMPAKTを使った際に、CPU負荷的には問題なくても、ストリーミングの能力が追いつかず、「プチッ」とノイズがのってしまった経験をお持ちではないでしょうか。

KONTAKT 2.1はこのストリーミングのパフォーマンスが著しく改善されました。
KONTAKT 2.0では全く再生できなかった、EWQLSO Full Edition 28パート使用の激重のデモソングが、KONTAKT 2.1にアップしたところ、ほとんど再生できるほどにまでなりました。
EWQLSOなどのオーケストラ系KOMPAKTプラグインをお使いの方は、KONTAKT 2の導入の恩恵は非常に大きいです。


今回ご紹介したかった「KONATKT 2 クロスグレード・バンドル」は、3rdパーティー製のKOMPAKT/INTAKTエンジン・ソフトをお持ちの方には、本当にお薦めの商品です。
NI10周年記念のキャンペーン期間中(2006年9月10日まで)は、NIの「Akoustik Piano」「Elektrik Piano」「Bandstand」からのクロスグレードも可能です。
おまけに「KONTAKT EXPERIENCE」「KONTAKT 2 TUTORIAL DVD」もバンドルされています。
(「TUTORIAL DVD」は、英語/フランス語/ドイツ語版になります。)

NIエンジンのソフトを全くお持ちでない方には、この機会に、廉価なKOMPAKTエンジンのソフトウェア(例えばArt Vista「Virtual Grand Piano」)と、「KONATKT 2 クロスグレード・バンドル」を購入するなんて方法も考えられます。

# by music_drec | 2006-07-08 03:19 | ソフトウェア検証
2006年 06月 14日

Apogee Ensemble、Symphony 発表会レポート

Apogee Ensemble、Symphony 発表会レポート_b0075089_0585621.jpg

Apogeeの期待の新製品、EnsembleとSymphonyの発表会に行ってまいりました。
昨日このブログでも急遽告知させていただきましたが、お時間が合わなかった方もいらっしゃると思いますので、ここで簡単なレポートをさせていただきます。

EnsembleはFireWire接続のオーディオインターフェース、SymphonyはPCI ExpressカードもしくはPCI-Xカードと、Apogee製のAD/DAコンバーターを組み合わせるシステムになります。
http://www.electori.co.jp/apogeepro/Ensemble.htm
http://www.electori.co.jp/apogeepro/Symphony.htm

まず大前提として、この2製品は完全にOS X用に開発されており、Mac用のドライバのみ供給されるそうです(ドライバのインストールの必要はないようです)。
Intel Macにも既に対応済みです。


Symphonyカードを使ってのシステム構築は、Pro Tools TDMシステムのそれとほぼ同様の考え方で、AD/DAコンバーターを数珠つなぎをしていくことで、カード1枚につき最大で32ch分の入出力を可能にしています。
G5で使う場合、合計3枚のカードを挿すことで、最大で96ch分もの入出力が可能になります。
デジタル入出力を装備したオーディオインターフェース(RMEやLynxなど)とApogeeのResetta800などを組み合わせて、よりハイエンドなシステム構築を考えている方には、ベストマッチな選択になることは間違いないでしょう。


EnsembleとSymphony共通で提供されるmaestroというコントロールソフトウェアは、ダイレクトモニター用のミキサーはもちろん、かなり詳細なパッチングも可能にしていますので、非常に柔軟性に富んだシステム構築ができそうです。
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そしてFireWire接続のEnsembleについてです。

入出力には、8イン(4ch分はマイクプリ搭載)/8アウトのアナログ端子、コアキシャル端子、S/MUX ADATも可能なオプティカル端子を装備しています。
マイクプリと2系統出力が可能なヘッドホン端子は、全てデジタル制御のボリュームが搭載されているらしく、非常に洗練されたデザインのフロントパネルからの制御はもちろんのこと、マイクプリのゲインをmaestroソフトウェアからコントロールすることも可能になっています。

そして皆さん最も気になっていることは、EnsembleとLogic Pro 7.2を組み合わせたときの動作だと思うのですが、この点も確認することができました。

現状でLogic Pro 7.2を立ち上げると、オーディオメニューの一番下のところが、「Apogee コントロールパネル」という名前でグレーアウトしているのをご確認いただけるはずです。
Ensembleが接続されていると、このメニューが選択可能になるのです。
そしてこの「Apogee コントロールパネル」の項で登場するのは、以下の3つのタグの画面です。
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こうして見ますと、あたかもLogic Pro 用のインターフェースとも受け取られそうですが、Logic Pro 7.2でコントロールできることは全てmaestroソフトウェアでも制御できますので、maestroソフトウェアを併用することで、Final CutやDPなどCore Audio対応の全てのアプリケーションでも同等のことができます。
しかしLogic Pro 7.2でEnsembleを使用する場合、これらの設定がソングの一部として保存できることになりそうですので、何かと重宝しそうです。

それでは、また。

# by music_drec | 2006-06-14 02:27 | イベントの告知、レポート